喜八工房の漆器あれこれ | 2012年1月31日
根来塗・・・
黒漆の上に朱漆を塗った漆器で、元来は和歌山県にある根来寺で日用品や仏具としてつくられたものといわれています。これを長年使い込むことにより朱漆が擦れてきて下に塗ってある黒漆が所々模様のように浮かび上がってきたものを、無作為に現れた寂びた風情の美しさとして古くから愛されてきました。私もそんな根来塗に魅せられた1人です。現代では、作為的に表面の朱漆を研いだり、削ったりして下の黒を出した漆器を総じて根来塗と呼ぶことが多いです。
作為的につくられた根来塗風漆器はわざとらしい模様が出た醜いものから、ちゃんと長く使い古されたような自然な美しさを醸し出したものまで雑多にあります。根来塗風を作っている高名な作家さんもいますが、日用品として考えると価格が高すぎます。私も根来塗が好きなので、長い間使い込まれてきたような古びた風情のわざとらしくない根来塗風漆器を作りたいと、ずっと考えておりました。しかも日用品として買いやすい価格で。
そして生まれたのが、根来塗とは似て非なるもの、その名も『似非根来塗』
木地は山中の轆轤木地師が担当。塗りは似非根来塗師(私)。
似非(えせ)という響きがインチキくさく良くないイメージですが、精神も技術も稚拙な私にはピッタリだと思っております。「稚拙美」とも言えます。しかしそこには、ある程度の数量を売りたいという商人的な目論みもあります。
似非根来塗 中棗(薄茶器) 似非根来塗師作 2008年
日用品としての椀もいくつか作りました。今後は商品として量産するか、或いは私の気が向いた時にだけ、もったいぶって少量だけ作るかは未定です。ただし、通常品とは違い、私からの直接販売のみとなる可能性大です。
「傷が付いたらどうしよう!」って、使うのを敬遠されがちだった漆器の時代から、傷んでいく姿すら楽しみながら使う漆器の時代へと、この似非根来塗師が変えていきましょう!
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